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1998.1.5

1998.1.5
-彩りのある一年を目指して-


 新年あけましておめでとうございます。  1998年が充実した、21世紀に向かって前向きにつながっていく、そんな年となりますことを心より願っております。

 昨年はみなさんにとってどのような1年だったでしょうか?
 私もたくさんの方から同じように問いかけられました。一言で答えたとき、もう少し言葉を足したとき、これまではその場の状況で答えて来ましたが、私は心の内ではもっと別の言葉で語りたかった想いがあります。なぜなら、1年をふり返って語ることは、今の私にとってとても大切にしたいことだからなのです。新しい年の抱負を口にする前に、その私が去年言い残してしまった想いから始めたいと思います。

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 過ぎ去った97年を振り返ってみると、どの季節を思い出しても、時の-重さ-とでも言うような、1日1日の存在を、強く認識した1年でした。

自分の音に納得出来た瞬間、求めていた響きを見つけた夜、静寂な音を探すうちに迎えた朝、ほとんど眠らず弾き続けた週末、ヨーロッパで過ごした1カ月、ひとつのフレーズにこだわった時期・・・ 手帳のどのページをめくっても、そこには意味のない空白の1日など存在しないほど、有意義なときを12カ月間過ごすことができました。



こうした充実した流れに乗り、手応えをつかんだステージや伝えたい音を見つけられた旅を経験し、日本各地で多くの人々に温かく迎えられ、拍手や手紙、Eメールやいただいた2つの大きな賞(第23回 日本ショパン協会賞・第九回 飛騨古川音楽大賞 新人賞)にも励まされ、4つの美しい季節の日本を巡ることが出来ました。
しかし、延期された予定、半ばで終わってしまった目標、果たせなかった計画、返事の出せなかった質問、定期的に更新できなかったページ・・・ こうした無念や悔いの残る日々も含まれる365日であったことも事実でした。

充実感という時の重さを知り、それでも97年は私にとって思い出深い、素晴らしい1年として長く記憶されることでしょう。

 多くの出逢いがあり、旅があり、そしてステージがありました。過ぎ去った1997年は私にとって貴重な経験を積ませていただいた、ピアニストとしてだけでなく人間としてもいろいろと種を蒔くことの出来た1年でした。 心からの感謝を、支えて下さった皆様方にもう一度お伝えしたいと思います。

日本各地や海外で私のステージにご来聴いただき、また終演後のサイン会や楽屋で温かいお言葉をかけていただき、ありがとうございました。ピアニスト宮谷理香を起用して下さったマネージメントおよびピアノメーカー、各地の主催者の皆様、ありがとうございました。 それから、普段このホームページにアクセスしてくださっているみなさん、そして返事をなかなか出せない私ですが、メールを贈って下さる皆さん、ありがとうございます。どのメールも私にとっては素敵なプレゼントであり、大切な宝物です。

本年も努力を重ね、励まされるだけの価値のあるピアニストであり人間でいられるように、しっかりとした自己を形成したいと思っています。
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 そんな私が年賀状に毛筆で書いたのが、「彩」の一字でした。


音に彩りを-。これが私の1998年のテーマです。暖かい音と冷たい音、優しさと怖さ、喜びと苦悩、瞬間と永遠というように、多彩な音を奏でたいと願っています。そして将来的には、「アンビバレンツな -相反するものが共存する- 音」に辿りつきたいと思っています。

夢に対して、愛に対して何がアンビバレンツなのか、1998年1月の私にはよく分かりません。生に対して、今は死よりも止を感じながらショパンを弾いていますが、もしかすると来年のショパン没後150周年には、もう少し違う感覚を有しているかも知れません。

今年の心のテーマは、アンビバレンツの第一歩としての彩りですが、具体的な音楽活動の面でも彩りある活動を目指していきたいと思っています。  私の演奏活動は、今非常に大きな分岐点に立っていると思っています。私のデビューは1996年の3月なので、この春になると3年目に入るのです。いろいろと不安もあるのですが、今年は思い切って勇気を出し、海外で演奏する機会を増やしたいと思っています。

今のところ、フランス、ポーランド、オーストリアの他にカナダで弾くことが出来そうです。ロシア、バルト3国からの手紙も届いているのですが、これらの国は99年に控えたショパン没後150周年記念のコンサートに変わるかもしれません。

また、ポーランドでのCDのレコーディングのお話を昨年まではお断りしていたのですが、今後のことを考えると、今年は少し前向きに考えても良いかと考えています。興味を持って下さる方々にとっても私にとっても、今年中に作ることできっとプラスになるのは間違いないのですから。

私はショパンをポーランドの先生方から学んだ影響があるので、ポーランドでの評価を重要視しています。ポーランドでは長期的な視野で私の将来を見て下さっているのは2010年のお話を聞いていても強く感じます。1999年のショパン没後150周年のためだけでなく、2010年の生誕200年をも見据えているからなのです。 1971年生まれの私はショパンの生誕200年を祝う年に、彼の生涯と同じ39才を迎えます。単なる商業主義ではなく、ショパンコンクールの入賞者への期待感が伝わり、さらには私にある種の使命感を思い起こさせるものがあり、39才までゆっくりとけれども確実にショパンの国の人々の求めるショパンの音の彩りを表現していくために、今年から充電期間を増やそうと思っています。

今年、そして1999年の日本での演奏活動は未定のことばかりですが、最近決定したリサイタルがあります。東京の紀尾井ホールにて、今年の10月16日(金)にリサイタルを開催します。プログラムは現在検討中ですが、やはりショパンを中心としたプログラムにするつもりです。詳細が決定いたしましたら、まずこのホームページでご案内いたしますので今しばらくお待ち下さい。

 2010年に39才になっている自分を、20世紀末の今日の時点では想像はしにくいのですが、21世紀の始まる年に30才を迎える自分を想像するのは難しくありません。
私にとっての20代は1991年7月にザルツブルグから始まりました。当時大学2年生だった私には、今日の自分は全く想像外でしかありません。しかし、あれからいくつもの季節が流れた今では、私にとって3年後の夏の日を想うことは楽しみでもあり、また生き甲斐を感じさせてくれるものでもあります。

1998年1月から私が30才になる2001年の7月まで、42.195カ月。マラソンの距離と同じ数字の月数を走りながら、2010年までの大いなる旅の序章が始まりました。
ピアニスト宮谷理香は、ショパン生誕200年の2010年まで、ショパンをこころの中心に持ち続けていきます。彼の生涯と同じ39才を迎えたとき、世界へのスタートラインに立てるように精進していきますので、今年もどうぞ温かく、末永く見守っていただきたく、心よりお願い申しあげます。


1998年 1月 5日
 宮谷 理香

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