スケジュール Schedule

1996.8.15

1996.8.15
-若き今を表現することを恐れずに-



 フランスに行って来ました。7月末に出発して8月12日帰国したところです。今回は毎年の夏に比べれば短期間の旅で、毎日のようにレッスンがあり、ルヴィエ先生もステファンスカ先生も大変熱心に指導して下さいました。  パリではステファンスカ先生と共にペールラシェーズ墓地に出かけ、ショパンの墓に花を捧げて来ました。ショパンの墓の前はいつにもまして献花が多く、世界中で愛されるショパンの作品の表現者としての自分の責任を強く感じました。  

 帰国してまだ3日なので時差による疲れもありますが、18日の演奏会が迫っているのでゆっくりと休んでもいられません。この演奏会は作品(ショパン作品コンチェルト第1番)、オーケストラ(日本フィル)、会場(東京芸術劇場)とも初めてで、もちろん指揮者の藤岡幸夫氏とも初の共演です。3月にデビューして半年も経たないうちに、このような大きなチャンスをいただいて、大変光栄に思うと同時に大きな責任も感じています。

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 デビューコンサートのサントリー大ホール同様に、東京芸術劇場もチケットが完売とのことで、満席の皆様の前で演奏できる喜びが、あと数日の頑張りを支えてくれています。  私のホームページにアクセスして下さり、また18日の演奏会にも来聴される方々がいらっしゃれば、当日のご感想を客席の位置とともにお知らせいただけると、今後の演奏会に大いに役立ちますのでよろしくお願い申しあげます。また、18日以外の演奏会においても同様にご感想を是非お寄せいただきたく存じます。




 ホームページを開設するにあたって私が強く願ったのは、こうしたコミュニケーションの確立でした。私たち音楽家は、これからの時代、21世紀において、ひょっとすると単にステージで演奏するだけではなく、演奏者が当日のプログラムに曲目解説、解釈を表現する時代になるのではないかと思っています。このような思いはコンクールに入賞する前から持っていましたので、3月の大阪・いずみホール、東京・サントリー大ホールでのデビューリサイタルのプログラムには、自分の言葉で曲目解説をさせていただきました。

 ショパンの第1番のコンチェルトをステファンスカ先生の前で弾く寸前に、先生は「理香、この作品を作曲したときのショパンの年令はいくつですか?」と問われました。私が20才と答えると先生は満足そうにうなずかれたのでした。先生はあのときに、私が上手に弾こうと力んでいることをきっと感じ取られたのでしょう。何気ない質問のなかに、先生の愛情が感じられ、また、70才を超えられた先生が「20才にはその世代でしか表現できないショパンを忘れないように」とメッセージを送られた気がして、私はずいぶん気持ちが楽になりました。若き日々の体験を思い出して演奏するのではなく、若き今を表現する演奏を心がけること、それをわすれずに。

もうすぐ8月18日がやってきます。

(8月15日記)

 

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