スケジュール Schedule

2006.4.10

2006.4.10
デビュー10周年を迎えて


みなさん、お久しぶりです!お元気ですか?
長い間 メッセージの更新をせずにごめんなさい。
しばらくご無沙汰しているうちに、私のホームページ、おかげさまで10周年となりまし た!開設(96年1月1日)当時は、個人でホームページを持っていると驚かれたものですし、 ごく限られた一部の方しかメールを使っていませんでした。現在では、誰もが日常的に メールを使い、インターネットで情報検索をし、という時代。ブログがものすごい勢力となっていますね。いろいろな方からブログ開設を勧められていますが・・・どうか長 い目で、応援よろしくお願いします!
演奏会場では、パワー全開にして表現していますので、ぜひお出掛けくださいね。いつも皆さんにいただく「応援メッセージ」には、心から励まされて、支えていただいてます。本当にありがとう!
さて、この3月でピアニストとしてもデビュー10周年の日を迎える事ができました。
最近ステージに立つと思う事があります。 ここに立つということ。私はここに突如として現れたのではないのです。このホールを 支える人がいて、楽器を守る人がいて、今日のコンサートに関わって創って下さる多くの人がいて、お客様が足を運んで下さり、さらに今日までその土地を創って来た歴史と 伝統があり、音楽の先達の苦労や歩みがあり・・・・・お逢いしたことのない多くの人たちの人生、縁あってめぐり合った人たちとの出逢い、そういったすべての日々や想いの大地の上に、立たせてもらっている、ということ。
そして、その想いを私もつないで行きたい、ということ。

デビュー10周年を迎える事ができた今、みなさんに一番お伝えしたいのは、心からの感謝の気持ちです。いつもご支援くださって本当にありがとうございます。
そして、これからも、応援よろしくお願いします。

今回は『ピアノの本』でのインタビューを、デビュー10周年の私からのメッセージとしてお伝えしたいと思います。    ※草思社クリエイティヴ発行の『ピアノの本』2006年1月号"PIANISTALK"より 転用させていただきました。ホームページ用に一部訂正しております。インタヴューと編集は一色真理さん。ご理解、ご協力ありがとうございました。



  『私にとって“弾く”ことは“生きる”こと』


◇デビュー10周年を振り返って

──宮谷さんは今年(2006年)でデビュー10周年。振り返ってみていかがですか?
R: ピアニスト活動をこの10年間続けさせていただいたことに、まず感謝しています。 思い出の詰まった日々でしたが、振り返るとあっという間だった気もします。昨年は 10月にショパンコンクールがあったことで、時の経過をつくづく実感させられました 。特に“10年”という時間を感じさせられることが多いのは、ショパンの曲を演奏するとき、──とりわけ当時コンクールや練習で弾いた曲に改めて触れたときです。私 が弾くショパンのレパートリーも10年の間にかなり変わってきているのですが、あえ て当時の曲を弾いてみることがあるんです。ところが、同じ曲を弾いているのに、当 時のようには弾けません。別の演奏になってしまう。そこに自分の歩いてきた、引き 返すことのできない歳月を、感じさせられることがよくあります。


◇ひとりの人間としてのショパンと向き合う

──宮谷さんがそもそもショパンコンクールを目指すようになったきっかけをお聞か せいただけますか?
R: 私が最初にヨーロッパへ勉強に行ったのは、1991年のことです。この年、ムニ エ先生のマスタークラスに参加し、翌年には今回ショパンコンクールの審査委員長を されたヤシンスキー先生や、ドレンスキー先生のクラスに出席しました。それ以前の私は特に目立ったところのない平均的な生徒でしかなくて、日本の音大の先生からは 「あなたは真面目なのが取り柄。真面目に続けていれば、人生何かいいことあるかも しれない」と言われ続けていたんですよ(笑)。それが、ヨーロッパで出会った先生方から思わぬ評価をいただき、中でもヤシンスキー先生から「あなたのエチュードは ショパンコンクールで通用するレベルです」と認めていただいたことが、私にとって大きな転機になりました。別の世界のことのように思っていたショパンコンクールを 、「私でも目指してもいいものなのかしら?」と、初めて考えるようになったんです。それまでの私は自分の可能性に目をつぶって、何もしないであきらめていただけなのではないか。先生から与えられた課題をこなすのに精一杯で、なぜ弾くのか、なぜ 生きるのかと考えもせずに、周りの人たちに守られてぬるま湯に浸かっているだけだったのではないか……。そんな自分の意識改革を迫られたのは、一つの衝撃でしたね 。でも、とても幸運だったと思うのは、当時私はまだ19歳と若く、それをチャンスに恐れることなく自分を変えていくことができたんです。

──その結果、95年の第13回ショパンコンクールで第5位入賞。翌年から宮谷さんのピアニストとしての活動がスタートするわけですが、逆に“ショパン弾き”というイ メージが付いてまわることにもなりましたね。
R: ショパンコンクールを大きな目標として勉強を重ねる過程では、それこそいろんな出会いがあり、また挫折も経験しました。その中で音楽だけにとどまらず、人間的な 意味でも本当に沢山のことを学んだのですね。そういう意味で、一人の人間としてのショパンを常に私自身と重ねてとても身近に感じていた、濃密な数年間だったと思い ます。
  その後の10年間もまた、私にとってショパンの音楽や人間性と向き合い続けた年月 でした。先ほど「同じショパンの曲でも、10年前と同じ演奏はできない」と言いましたが、それはその時間の中で、私自身の変化をも含めたすべてを、ショパンの音楽が 受け止めてくれたということでもあります。だから、私にとってショパンは今も昔も なくてはならない大きな柱であり、今後もいいおつきあいをしていきたい存在なんで すね。とはいえその一方で、柱が一本だけでは安定も悪いし、それだけでは満足でき ないという思いもあります。ショパンも磨きたいし、ロマン派も古典派もバロックも 、そして現代音楽だって弾いていきたい。私って欲張りなんですよ(笑)。だから、 最近は特にリクエストがない限り、“オールショパンプログラム”ではなく、さまざ まなスタイルの曲を組み合わせて演奏するようにしているんです。


◇変化するものと不変なものと

──そうした思いも込めて、毎年ショパンの命日3月1日に行われているリサイタル 〈宮谷理香と廻るショパンの旅〉は、今年第六回を迎えます。
R: デビューして5年近く経ったとき、ふと気づいたんです。“時代がどんどん変化していくのに、自分の中で大切にしているものは変わらない”ということに。そこで、 ショパンの主要作品を柱に、2010年のショパン生誕200年に向けて、10回シリーズと いう息の長いスタンスで、その“変化”と“不変”を追いかけようとするコンサート のシリーズを始めました。2001年のことです。自分がその時々に取り組みたいものを “変化するもの”、ショパンを“不変なもの”ととらえ、それらを同じコンサートの ステージに置くことで、より深い世界を目指し、私がショパンの亡くなったのと同じ 年齢になる頃には、必ず何か見えてくるものがあるだろうと考えたのです。昨年はさ まざまな時代のポロネーズとショパンのポロネーズ全曲で彼の人生を辿ったのですが、 今年はショパンのエチュードと共に他の作曲家のエチュードを演奏することで、私の 中の“変化”と“不変”とに迫る予定です。


◇これからも“良い音”を探し続けたい

──金沢市内の小学校をめぐるボランティアコンサートもスタートしました。
R: 演奏家としての経験を積んでいく内に、最近はだんだん自分の外にも目を向ける余 裕ができてきました。とりわけ私の生まれ故郷・金沢でのコンサートでは、この土地 で暮らしてこられた皆さんの思いが積もって、金沢の文化の伝統を作り、それが私の存在のルーツになっていることを、ひしひしと感じるようになりました。私自身も皆 さんから与えられるだけでなく、何かご恩返しをしたい。そうした考えから、“子ど もたちに自分の演奏を通して、音楽を届けたい”と、〈「こころを耕す」ボランティアコンサート~宮谷理香のふるさと学校訪問~〉を始めたのです。昨年は金沢市内の 学校を十校回り、併せて2回の“市民のためのコンサート”を開催しました。今年は 市内だけでなく、石川県下の学校を幅広く訪問したいと思っています。

──今年はほかにもさまざまなコンサートが予定されていますね?
R: 2月には“知られざる作品を広める会”主催の〈アレンスキー没後100年記念コンサー ト〉で、高橋多佳子さんと《2台のピアノのための組曲第1番・第2番》を演奏します。 7月5日には作曲家の助川敏弥先生の〈喜寿記念コンサート〉に出演し、先生が私のために捧げてくださった新曲を披露することになっています。また、今年はシューマン没後150年に当たるので、その命日に当たる7月29日にはオール・シューマンのリサイ タルを開く予定ですし、10月にはモーツァルト生誕250年にちなみ、アンサンブル金 沢と共にモーツァルトの《ピアノ協奏曲第21番》を弾きます。
  こうして見ると、私は“何周年”といった年や日付に随分こだわる性分なのですね (笑)。だから、“デビュー10周年”というのも、その日から何かが変わるわけでな くても、その数字自体がある意味で自分のモチベーションにつながっているといえそ うです。これからも“良い音”を探し続け、自分自身に悔いのない生き方を、常に自 分に問いかけながら進んでいくことで、“弾く”ことが“生きる”ことにつながる真摯な演奏家であり続けたいと願っています。



  最後まで読んで下さってありがとうございます。
こうしたインタビューの言葉からも、現在の私を感じていただけたら嬉しいです。 でも、やはりピアニストはピアノで語るもの。ぜひ演奏会場でお会いしましょう! コンサート会場にて、皆様にお会いできることを心待ちにしています。


2006年 4月 10日
 宮谷 理香

>>タイトル一覧に戻る

pagetop